私たちは知らない土地を車で走る時にも、ビルやお店などの目印になるものを知っていれば目的地まで行くことができます。
ところが、水中では陸上ほどの視界を得ることができないため、陸上生活とはちょっと異なるナビゲーションスキルを身につける必要があります。

ダイビングのナビゲーションスキルには、コンパスナビゲーションとナチュラルナビゲーションの2種類ありますが、ここでは水中コンパスを使ったコンパスナビゲーションについて紹介します。

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この記事の目次

水中コンパス各部の名前

水中コンパスには、残圧計などのゲージ類と一緒になっているタイプや腕時計の様なタイプなど様々なものがありますが、原理はすべて同じです。
水中コンパス各部の名前も復習しておきましょう。

水中コンパスの写真と各部の名称

磁針

方位を示すコンパスの針です。地球上のどこにいても常に磁北を指します。

ラバーライン

照準線や基線とも呼ばれ、固定されて動かない直線をラバーラインと言います。水中コンパスによっても違いますが、だいたい赤や黒の1本か2本の直線です。

回転ベゼル

方角が0°や90°といった数値で書かれているダイヤルです。

インデックスマーク

回転ベゼルに付いているマークをインデックスと言います。回転ベゼルを回すと一緒に動くのですぐに分かります。

サイドウィンドウ

水中コンパスの横についている小窓のことです。水中での移動中に方向を確認する時に使います。サイドポートやサイドリーディングなどとも呼ばれます。

水中コンパスの使い方

水中コンパスの使い方はとっても簡単です。
「いま居る場所から120°の方向に進む」と仮定して説明します。

  1. 回転ベゼルを回してラバーラインの反対側を120°(進みたい方向)に合わせます。
  2. 磁針の北方向がインデックスマークに入る様に、体ごとゆっくりゆっくり回転します。

これで、ラバーラインの反対側は120°の方向を指しています。
ただ、コンパスをずーっと見ながら進むと、潮の流れなどに気づかず横移動してしまう可能性もあります。

潮の流れによってまっすぐ進めない事を示す図

そのため、進みたい方向が分かったら一度前を向いて、目標物を設定するのがポイントです。
「あそこの根に向かって進もう」といった具合に目標物を常に見ながら進めば、目的地にたどり着く事ができます。

目標物に向かって泳ぐと潮の流れがあっても目的地にたどり着ける

陸上でも台風などの風がめちゃ強い時は、まっすぐ進めませんよね?
水中では弱い潮の流れでも流されてしまい、まっすぐ進む事がとても難しいので、水中コンパスは方向を確認して目標物を設定する時にだけ使います。

フィンキックで移動距離を測る

コンパスで方位が分かっても、どのくらい移動したのか距離が分からなければ、コンパスナビゲーションは不完全です。
水中での距離を測る最も簡単な方法は、何回フィンキックを行ったのかキック数を数えておく方法です。

ナビゲーション実習では、コンパスを使った直線の往復や、90°で4回方向を変えて四角形を描いて元の場所に戻るといった方法でトレーニングをします。
例えば往復コースでトレーニングをしている時、目的地まで10キックで着いたならば、10キックで戻ってくれば元の場所に帰れるはずです。

往復コースでキック数を同じにすれば元の場所に戻れることを図解

しかし、実際にやってみるとそれほど簡単にできない事が分かります。
その理由は…

  1. 1キックの力が不安定で進む距離がバラバラになる
  2. 潮の流れによって1キックの進む距離がバラバラになる

という事が考えられます。

ナビゲーション実習では、1回のキックでの力の入れ具合を揃えるように意識してやってみましょう。

水中コンパスを見る時の注意点

コンパスを見る時には以下の点に注意します。

  • 進行方向に向けてまっすぐ持って見ること
  • ラバーラインが体の中心になる様にコンパスを持つこと
  • 水平になる様に持つこと

コンパスが傾いていると磁針が正しい方向を示さない事があります。
体の中心でまっすぐ水平に持って見る事が大切です。

また、中性浮力が安定していないと姿勢が安定しないのでコンパスを正しく使えないかもしれません。
中性浮力に自信がないときは着底して姿勢を安定させてからコンパスを見ましょう。

水中コンパスの実践的な使い方

実際のダイビングではコンパスを使ったナビゲーションは、ほぼ使いません。
コンパスを振って方向を確認しているガイドなんか見たことありませんよね?
ナチュラルナビゲーションがほとんどです。

しかし、いきなりナチュラルナビゲーションでダイビングをすることは不可能です。
そこでナチュラルナビゲーションの下地を作るために、ダイビング中にコンパスを活用する方法がおすすめです。

  • 水中マップを見てこれからダイビングをするコースと方角を覚えておく
  • ダイビング中も時々コンパスを見ながら、いま自分のいる場所を頭の中のマップで描く

同じポイントを何度か潜っていると、ナチュラルナビゲーションの時に目印になる地形や水中の特徴も分かるようになります。
しかし、コンパスを使いながら自分の位置と向かっている方向を確認しながらダイビングをすると地形も把握しやすくなります。

さらにダイビング後に、ガイドやインストラクターに、実際に通ったコースや地形などを確認すると、より水中が理解しやすくなるはずです。

水中コンパスのよくある疑問

水中コンパスは必要なのでしょうか?

ビーチダイビングをする時、沖の方角と岸の方角を知っておけば、もし現地ガイドとはぐれてしまっても岸まで戻る事ができるはずです。
ボートダイビングでも、進む方向を把握しておけばエントリーした場所まで戻れるなど、万一の時に役立つので常に携帯して、使い方もマスターしておくべきです。

もっと知りたい!続けてお読みください

この記事を書いた人

  • 井上 憲作
    SNSIダイブガイドを2018年7月に取得。 海より山が好きと公言していたが、2017年ダイビングと出会い「どハマり」し、すっかり海好きになりました(笑)

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