「ナイトロックス」や「エンリッチドエア」。学科の勉強中に知ることも多いのではないでしょうか。ここでは言葉の意味はもちろん、空気との差やどんなときに使うべきかまでわかりやすく解説します!

ナイトロックスとは?エンリッチドとの違いは?

ナイトロックス(Nitrox)=窒素(Nitrogen)+酸素(Oxygen)

「ナイトロックス」は、窒素と酸素の混合気体のことを指す造語です。空気もほぼ窒素と酸素で出来ているので、ナイトロックスのひとつといえます。

「エンリッチド」も同様にナイトロックスの一種で、空気と比べて酸素濃度が高いものを指します。酸素の割合は21~44%の間で自由に調整できますが、主に酸素が32%(EAN32)・36%(EAN36)のいずれかである場合がほとんどです。

ちなみに、空気より酸素濃度が低いナイトロックスもあります。テクニカルダイビングでかなりの深場で潜る際の酸素中毒を防ぐためにつくられました。

アメリカでは、オープンウォーターライセンスを取得後すぐに、ナイトロックスのスペシャリティも取得する流れが主流になっています。

2010年9月に高圧ガス保安法関係省令が改正されてから、日本でもナイトロックスが普及し始めました。

【空気vsナイトロックス】メリットデメリットまとめ

空気 ナイトロックス
メリット 安価
通常の器材で潜れる
潜水時間を長くできる
休息時間が短く済む
減圧症のリスクが下がる
窒素酔いになりにくい
身体が疲れにくい
デメリット 海外では主流でない所も 深場は潜れない
酸素中毒のリスクが上がる
高価
日本ではまだ主流でない
専用のレギュレーターが必要
ライセンスが必要

ナイトロックスはメリットの数だけ、デメリットもあるというのが正直なところ。

では、どんなときにナイトロックスを使うと良いのでしょう?

ナイトロックスをおすすめしたい方

こんな方は、ぜひナイトロックスを試してみてはいかがでしょうか。

  • 浅めの水深で長く何本も潜りたい方
  • ダイビング後すぐに高所移動を控えている方
  • 減圧症のリスクが高い方

カメラ派のダイバーや、クルージングでのダイビングでは真価を発揮するでしょう。

ダイビングの翌日に飛行機で移動する予定がある方にもおすすめです。意外と見落としがちなのが、車での移動。特に伊豆で潜ったあとに箱根の山を越えて首都圏に戻る予定がある場合は注意が必要です。(実際にダイビングの数時間後、高所移動中に発症するケースが多く見受けられます。)

減圧症のリスクが高いのは、喫煙者や中高齢の方、運動不足のダイバーなどです。また、一度減圧症を発症したことのある方も当てはまります。

とはいえ、空気を使って潜っているダイバーの減圧症発症率は、数千回潜って1回程度。結局ナイトロックスを使用すると潜水時間が長くなることが多いため、減圧症の発症リスクはそれほど変わらないのでは?と言われています。身体の疲れにくさも同様に、水深18mでは空気とナイトロックスの差はまだ実証されていないようです。

ナイトロックスを使うには

ナイトロックスを使うために必要なものが2つあります。

  • ナイトロックススペシャリティの資格
  • ナイトロックス専用のレギュレーター

ナイトロックススペシャリティを持っていると、酸素の割合が39%までのナイトロックスを使用できるようになります。

通常のレギュレーターをナイトロックスに使用すると、レギュレーターが酸化してしまいます。が、どうやら日本が神経質になっているところもある様子。海外では空気とナイトロックスで同じレギュレーターを使用していることもしばしば。ともかく、安全に潜るのであれば専用レギュレーターを用意するのが安心ですね。

ナイトロックスを取り扱っているショップ一覧

各指導団体別に、ナイトロックスの体験、ライセンス取得、ファンダイビングが出来るショップを紹介します。

無減圧潜水時間と最大深度の差

ちなみに、空気とナイトロックスでは、実際にどの程度潜水時間や最大深度が変わるのでしょうか?

無減圧潜水時間とは、減圧停止を必要としない最大の潜水時間のこと。つまりその深さに最大どのくらいの時間いられるか、を表したものです。(最大深度で算出します)

実際に無減圧潜水時間を、空気とナイトロックス(酸素32%、酸素36%の場合)で比較してみましょう。

水深 空気 EAN32 EAN36
12m 108分 131分 145分
15m 63分 108分 131分
18m 45分 63分 108分
21m 37分 45分 63分
24m 28分 37分 45分
27m 24分 28分 37分
30m 18分 26分
33m 16分 24分
36m 10分 18分
39m 6分

※SNSIダイブテーブル ドップラー無減圧限界テーブルより算出

空気に比べて、ナイトロックスのほうが無減圧潜水時間が長くなっていることがわかります。ただし、SNSIの場合ナイトロックスの最大ボトムタイムは120分と決まっているので注意しましょう。(水深や気体に関わらず120分までです。)

表の下のほうを見ると、時間が書いていない箇所がありますよね。実はナイトロックスでは潜れない深さなんです。

酸素限界深度とは、酸素中毒を防止するために安全な深度のことです。ナイトロックスは酸素の割合を増やしているため、深く潜るほど酸素濃度が濃くなり、酸素中毒になりやすいと言えます。

酸素限界深度は以下の計算式で算出することができます。

(1.4÷呼吸ガスの酸素分圧-1)×10 

※小数点以下は切り捨てます

これに当てはめて、各気体の酸素限界深度を出してみると…

空気 EAN32 EAN36
酸素分圧 0.21 0.32 0.36
酸素限界深度 56m 33m 28m
窒素酔い 31m 37m 40m

ナイトロックスは空気よりも浅い水深で、酸素限界深度に至ることがわかります。

とはいえ空気は水深31mで窒素酔いになる可能性があります。

つまり、安全に潜れる最大深度は

  • 空気…31m
  • EAN32…33m
  • EAN36…28m

ということ。実はそんなに変わらないんですね。

まとめ

浅めの水深で長く何本も潜る機会が多いダイバーは、まずはナイトロックスを体験してみてはいかがでしょうか。納得のいく写真が撮れたり、潜るポイントが広範囲になるかもしれません!

もっと知りたい!続けてお読みください

この記事を書いた人

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    SNSIダイブガイド。2018年中にインストラクター予定。 鹿児島の離島、徳之島で晴れの日はクジラとカメを追い、雨の日はWebコンサルティングを行う。

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