ホエールスイムは想像以上に過酷な環境。憧れのクジラたちと優雅にスイムするためには相当な事前準備が必要です。装備・技術・経験の3項目に分けて、どんな準備が必要かまとめました。
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ホエールスイムとは?
クジラと一緒に泳ぐ体験、それがホエールスイムです。マスク・フィン・シュノーケルを装備し、ボートからエントリー、水面や水中からクジラを追います。イルカと違い、クジラは船や人間に近寄ってくることはほとんどありません。そのため時速30キロのクジラに追いつくための装備・技術・経験が必要になるのです。
ホエールスイムの装備
まずは必要な装備を知りましょう。なるべく早めに用意して、使いこなせる状態にしておくことが重要です。
1.フィン
時速30キロのクジラに追いつくためのフィンを選びましょう。フルフットのフィンなら、足全体を使ったキックがしなやかなフィンワークをうみ、推進力になります。
水面をシュノーケルで挑む場合
バラクーダやスーパーミュー、ワープフィンがおすすめ。ラバーで出来ています。特にバラクーダは最強説があるほどですが、2年に1度の限定生産のみなので手に入りにくい状況。もしGetできるチャンスがあればすぐに購入することをおすすめします。
水中をスキンダイビングで挑む場合
Leaderfins(リーダーフィン)やOMER(オマー)がおすすめ。カーボン素材は水圧でフィンが潰れないため、水中でも推進力が落ちません。とくにリーダーフィンは素材・硬度も選べ、デザイン性も高くて高品質なのに他のロングフィンの約半額というお手頃価格。
2.冬用ウェットスーツ
低水温に強く、水の抵抗が少ないスーツにしましょう。
日本でクジラに出会えるのは1〜3月。水温もまだまだ低く、通常ならドライスーツを選びたいところです。が、ドライスーツだと水の抵抗が大きいため、ウェットスーツよりも速度が落ちてしまいます。最速で泳ごうとするとドライスーツのなかに浸水してしまうことも・・・。
実際に水面・水中にいる時間は長くても3分程度。一瞬の勝負であり興奮状態なので、意外とウェットスーツでも寒くないものです。ただし3mmの使い古したものや、サイズが合わないものだと極寒に感じることでしょう。6.5mm(ロクハン)や5mmのウェットスーツ、セミドライがおすすめ。できればオーダーメイドで自分の身体にぴったり合うものだと保温効果が高まります。インナーもあるとGood。
3.ボートコート・寒さ対策グッズ
濡れた状態で数時間ボートの上にいても大丈夫なように準備します。
冬は比較的悪天候になりやすいため、気温も低く強風のなか数時間ホエールサーチをすることもしばしば。特に一度でもホエールスイムに挑戦したあとは身体も冷え切っていることでしょう。スーツの上から羽織れて風を通さない服を準備しておくことGood。ボートコートなら安心です。加えてカイロや温かい飲み物などもあると安心です。
4.マスク・シュノーケル
一瞬の勝負中はマスククリアする時間が惜しいほど。まずは自分の顔にフィットするマスクを選ぶようにします。
5.カメラ
ポイントは、最速で泳いでも綺麗に撮影できるカメラを用意すること。
これから準備する方はオリンパスのTGトラッカーがおすすめです。比較的体積が小さいため、カメラに水の抵抗を感じにくく、大きいカメラよりもブレずに撮影しやすくなります。他のカメラでも、本体に防水機能があるのであればハウジングを外し、できるだけ軽装備にするとよいでしょう。
加えてTGトラッカーは動画専門の機種なだけあり、被写体にピントが素早く合います。オリンパスブルーの美しい色味が出る点は、他のアクションカメラとの優位点といえるでしょう。
忘れがちなのが、絶対にカメラを落とさないようにストラップ等をつけておくこと。1度落とすと拾うことができない水深です。すごい映像が撮れて興奮してバンザイしたらカメラは水の底・・・なんて現場を目撃した身としては、ストラップ等の準備を強く推奨します。
写真派であればTG5がおすすめ。シュノーケル派の人はハウジングを外すことで水の抵抗を抑えることができ、推進力が上がるでしょう。
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6.偏光レンズのサングラス
ボート上からのホエールサーチ用に持参したい一品。
眩しさを軽減、逆光にも強い点はもちろんですが、偏光レンズのサングラスにすることで水中にいるクジラの影をいち早く見つけることができます。一瞬を撮り逃さないために用意しておくとGood。
7.酔い止め
冬の海は想像以上に過酷。波のうねりも激しかったり、乗船・サーチ時間が長めだったりします。いつもなら酔わない人でも酔うこともしばしば。少しでも不安があるのなら酔い止めは必須のアイテムです。
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ホエールスイムの技術
せっかく最高の装備を準備しても、使いこなせなければ宝の持ち腐れ。事前にスキルアップをしてから挑みましょう。
8.時速30キロに追いつくスピードを身につける
フィンスイミングのフォームを改善し、美しくしなやかに泳ぎます。
一瞬の勝負において、フィンを使いこなし、1キックで飛躍的に進むことは最重要といっても過言ではありません。スピードが出ない最大の理由は、筋力不足よりもフィンスイムのフォームが崩れている場合がほとんど。以下のポイントをチェック・改善してみましょう。
- 身体を水平に
- 脚全体とフィンが一体になっている感覚
- 太ももから蹴り出す
- 膝を曲げすぎない、膝から入らない
9.全速力で泳ぎ続けられるスタミナをつける
最後まで諦めず泳ぎ続けられた者だけが見られる光景があります。
たとえばクジラの姿が見えなくなっても追いかけていると、急にクジラがブロー(潮吹き)のために再浮上してくることも。足がもげても泳ぐ!という気合と根性も大切ですが、それに応えるだけのスタミナを日頃から醸成しておきましょう。スクワットなどの下半身強化や、フィンをつけた状態で立ち泳ぎを最低15分以上などがおすすめ。
10.全速力スイムでもブレずに撮影する
ポイントは全身、特に肩の力を抜くこと。
身体に力が入っていると、水の抵抗を受けカメラがブレてしまいます。最初から全身の力を抜こうとするよりも、まずは肩の力を抜くことに集中しましょう。通常速度でリラックスしてしなやかに泳げるようになったら、全速力でも再現出来るように練習します。
11.フリーダイビングのスキルを身につける
水中でクジラを追いかけたいなら、フリーダイビングのスキルがあると◎。
数十秒間の息堪え、素早い潜行(ジャックナイフ)、耳抜き、ドルフィンスイムなどを身につけておきましょう。独学だと危険な可能性があるので、プロと一緒に練習することをおすすめします。
耳抜きができない人へ ~原理&方法・コツをわかりやすく解説~
12.落ち着いて水面休息できる
ホエールスイム中〜終了後、ボートに上がるまでにパニックにならないようにします。万が一シュノーケルセットを無くしたり、足をつるなどのトラブルがあっても、水面で落ち着いて待機できるよう訓練しておきましょう。
ホエールスイムで身につけていくと良いこと
ここからは実際にホエールスイムを経験して身につけていくとさらに楽しめるポイントを挙げていきます。イメージしておくと短期間で経験値をぐっと積めることでしょう。
13.事前にカメラの設定を済ませておく
エントリー前に設定しようとすると、焦ってしまったり電池を消費してしまったり・・・できれば乗船前に完了しておきましょう。おすすめの設定内容を、TG5を例に説明します。
- 写真の場合:水中ワイド
- クジラのような大きな被写体を撮影するには水中ワイドが最適です。(ダイヤルで魚>水中ワイド)
- 動画の場合:4K
- 最高画質を選択。ただしSDカードによっては撮影時間が数十秒〜1分経過すると撮影終了してしまうことも・・・(HS:ハイスピードも同様)事前に連続で最大何分撮影できるか確認しておきましょう。短かった場合はスタンダードでもOKです。(ダイヤルで🎥>4Kまたはスタンダード)
WB:ホワイトバランスを水中にしておくことも忘れずに。(OK>WB>水中) - 等倍
- ズームすると画質が荒くなったり、クジラの全体像を枠内に収められなくなりがち。後ほど編集でズームして切り取れば大丈夫です。
- AF(オートフォーカス)ターゲットを中央一点に
- とくに動画撮影時はシャッター半押ししてもピントが修正されません。事前に中央の被写体にフォーカスするように設定しておきます。(メニュー>📷1>AFターゲット>【・】)
14.ベストなエントリー位置を見極める
勝負はエントリー前に決まると言っても過言ではありません。たとえばクジラが船の右側に現れたのに、自分が船の左側からエントリーしてしまったら、距離の大幅なロスにつながってしまいます。エントリー直前まで臨機応変に位置を変えられるようにします。最初のうちは船の後方に待機していると、右にも左にも対応しやすくてGood。
ベテランの隣もおすすめです。エントリー後にクジラを見失ってしまっても、ベテランの方が目印になってくれるかもしれません。
15.急なエントリーにも慌てない
エントリーOKの号令は突然やってきます。あわててエントリーするとマスクを押さえることを忘れてしまうこともしばしば。するとマスクがずり落ちてしまい、水の底へ・・・せっかくのチャンスも台無しです。エントリー場所を決めたらマスクを押さえカメラを守り、いつでもエントリーできる体勢をつくっておきましょう。
16.クジラの進行方向へ先回り
エントリー前から、クジラの進行方向を確認しておきましょう。そのまま目を離さずエントリーし、先回りします。進むべき方向がわからなくなったときは、ベテランダイバーを探すのもアリですね。
17.腕を伸ばし、クジラとカメラを見ながら撮影
利き手にカメラを持ち、腕を伸ばし、被写体とカメラ画面を同時に見ながら撮影します。腕の先にカメラ、被写体がまっすぐ並ぶようなイメージです。両手でカメラを持つと、ブレは軽減できますが水の抵抗が大きくなったり、カメラ画面ばかりみて被写体を見失ったりするかも・・・
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この記事を書いた人
- 723SNSIダイブガイド。2018年中にインストラクター予定。 鹿児島の離島、徳之島で晴れの日はクジラとカメを追い、雨の日はWebコンサルティングを行う。